斜構オタクは推しアイドルの夢を見るか

酒カスによるブログ。TwitterID:@Le_Cha_449, @telier_449

TCアウトサイダー没妄想

バスターブレイド:のり子 ベルベット:真

 

アウトレイジの追ってをダスクから引き離したまではいいが。厄介な相手まで連れてきてしまった。ベルベット。想像以上の難敵であることは明らかだった。形勢を立て直そうと建物に逃げ込んだつもりだったが、どうやら向こうにそう仕向けられたらしい。立て直すどころか向こうに利した環境であることは間違いない。

ベルベット「ほらほら、逃げてるばっかりじゃこっちもつまんないからさー、一緒に遊んでおくれよ。バスターブレイドさん」
バスターブレイド「そんな余裕、あるかっての」

こちらの獲物は長身の刀。廃墟とはいえ瓦礫やら建物に残された物品やらが転がっている狭隘な場で振り回すのは愚かしい限りだ。対して敵手の獲物はナイフ。接近戦に有利なのは彼方であるのは火を見るよりも明らか。加えて自分より小柄な上にやたらと迅い。瞬発力もこちらが劣っていた。障害物だらけの戦場で逃げの一手を取ることでかろうじて攻撃を逃れていた。

…あるいは、帯刀していた脇差が頭の片隅にないでもなかったが。その可能性は棄却された。相手が悪すぎる。凡庸な手合いならばともかく、対敵は相当の手練れ。脇差を使うにしても一定の時間戦うことを想定すると、普段使い慣れていない獲物を選択することが賢い選択とは思えなかった。いや、そもそも並みの相手ならここまで追いつめられることもなく、刀身にかかっていたに違いない。となると、脇差は最後の手段、窮鼠が猫を噛むための手段として残して置くべきだった。

ベルベット「君、案外と冷静というか、思ったよりもキレるね」
バスターブレイド「それはどうも、っっつ」

ナイフが頬を掠める。温かい血が滴り落ちる、対して背筋が冷えた。
…何とか状況を打破しなくてはならない。

一度刀を構えられたなら、間合いはこちらがはるかに上。しかし相手がそれを許してくれるはずがないことは明々白々である。加えて先ほど思案した通りそもそも刀を抜いて戦えるような場所ではない。大きな問題は二つ。状況は困窮していた。

一つ、刀を使える環境として活路を見出すならば、そこは廊下である。瓦礫は例のごとく散らばっているものの、刀を振るだけの空間は確保できそうであった。

しかし逆に言えば逃げ隠れおおせるだけの障害物はないということで。今こうしているような状況は続けられない。廊下に出たところで敵方がこちらの意図を見抜かないはずはない。追撃を重ねこちらの魂胆を阻止してくるだろう。こちらが行きつくところまで追いつめられれば、凶刃に伏すことになるだろう。

…やはり刀を抜き、構えるといった行為は至難の業であると考えざるを得ない。

一瞬、ベルベットの動きを止められたなら。こちらに何かをできる余地はあるのか。

ベルベット「ふっ」

敵手は攻撃の手を緩めない。このままではいずれにせよ…。脳裏によぎる焦燥を振り切り、ベルベットの攻撃を逃れるために体を動かす。が、状況は一層逼迫していた。

…しまった。気づいたときにはもう遅い。既に体は廊下に踊りだしていた。

少しでも時間を稼ぐため、転がっている崩れた壁の欠片を背後のベルベット目掛けて放り投げる。勿論当たるはずもなく、敵手はついと体を動かし投擲物を躱していた。これでは敵の一歩分の時間を稼いだに過ぎない。

万事休す。背後に迫る敵に対して成す術がない。数瞬の猶予で出来ることなどたかが知れていた。脇差を使うしか、ないだろうか。多少は交戦できるが、しかし。

刹那。鍔に手をかけるイメージが頭に浮かび。

ベルベット「…?」

ベルベットとこちら、彼我の距離は約三間。振り向き体勢を整える時間がかろうじてある程度。…それだけあれば十分であった。体を翻す。

バスターブレイド「…」スッ
ベルベット「!」

対敵の動きが鈍る。いや、こちらに近づくまいと急制動をかけている。やはり相当の手練れ、こちらの意図は露見していた。が、構わない。形勢は既に逆転していた。

居合。日本刀を鞘に収めた状態で、素早く鞘から抜き放つ動作で一撃を加える。あるいは、相手の攻撃を一度受け流し、二の太刀で相手にとどめを刺す。日本古来の剣術を習得していたバスターブレイドは、この技術もまた会得していた。

相手と近い間合いでは不利な鞘に収まった長刀で、短刀を持った相手に如何に勝つか、という所から居合が生まれたとされている。

まともに構えを取る時間はなかった。が、振り向きながら帯刀していた自らの獲物に手を伸ばす猶予はあった。片膝を突きつつ、左手を鍔を押し出せる位置に。右手を柄に持っていきながら、体を捩じる。

対敵はこちらの間合いに入っては来てくれなかったが、しかしもうこちらの間合いにうかうかと入ってくることもないだろう。対敵の迅さにこちらの体裁きでどうにかなるとは思えない。しかし、居合のスピードはそれを凌駕する。向こうが間合いに入れば最後、絶対に仕留める自信がある。かくして形勢は逆転し、両者は膠着した。

バスターブレイド「…」
ベルベット「…」

摺り足でにじり寄る。向こうもじり、と後ずさる。形勢は逆転したが、これでは仕留められない。

 

 

趣味全開でここまで書いてキャラがほとんどしゃべっていないことに気が付き一人で草を生やしたのち虚無に陥った。(文責:ルシャ)